友人から 〜 高岡陽

奴と出会ってかれこれ27年が過ぎ、人生の半分以上の長さとなっている。
いつの頃からだろう、長く会っていなくとも「久しぶり!」な 感覚がなくなったのは。

愛媛の田舎から東京に出てきたばかりの頃、僕には見るもの全てが新鮮で、かつ怖かった。
美術系大手予備校に通い始めた一浪の春。そこではまず腕試しのコンクールが行われ、初期センスの優劣がつけられるのだが、僕はというと・・・中の上くらいだったか。

上位作品の都会的な洗練されたセンス に驚き、まだまだ学習も情報も乏しい僕はそれらに憧れた。
その一番上 に鎮座するもの、当面の目標となったその作品は群を抜いて素晴らしかった。
その作者は「尾崎悟」という。

奴はTシャツにズボン、 雪駄というなりで都会的とはほど遠い風貌、作品とのギャップは大き かったが、鋭い瞳の男だった。
奴とはすぐに親しくなり、僕にいろんな ことを教えてくれた。
(その頃味を占めたのか、他愛もない嘘で僕をだますのがどうやら今でも趣味となっている様子)(笑)。

繊細かつパワフ ルでセンシティヴ、たえず新しいことに挑戦し、それを昇華してゆくと いう奴の制作スタイルに刺激され、僕の能力も徐々に目覚めてゆくのを 感じる日々・・・楽しかった。

僕たちは結局そこで二浪するのだが、ある時僕は奴を裏切ってしまう。
一度目の裏切りの時、奴は僕の頬を張った。
二度目の裏切りの時、奴の 瞳は冷たくなった。
冬が過ぎて新芽が息吹く頃、僕らは互いに東京芸術大学に合格する。
発表の日、予備校への報告の道すがら奴に会った。
奴は僕を許し、疎遠になっていた僕たちの関係は再度近づいた。

大学時代、僕らは一緒に音楽(ロック)を奏で、制作に励み、互いに女に振られたりしながら日々過ぎる中、奴の親父が他界、奴の心に大きな穴が空いた。
だが、奴はそれすらも昇華させ、心の穴を埋めた。
現在、制作フィールドはグラフィックデザインと立体造形という違いはあるものの、彼の作品を見るたびに驚きと新鮮さに出会うことができる。
それを見る時、その話を聞く時、それは僕にとってとても貴重な時間なのだ。

あれから何年経ったか。
毎日会う訳でもなく、頻繁に連絡をとっている 訳でもない。
連絡するとき「久しぶり」と、社交辞令では言うものの、 その実やっぱり久しい感じがしない。

人生の中で一番濃厚で純粋だった 頃に、歯に衣着せぬ本音の付き合いを始めたから、もはや家族のような 関係になっているのかもしれない。

僕の「嘘」が絶対に通用しない相手。
だが、奴の「嘘」は今でも充分僕に通用する。

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